サンジ婦警の逮捕しちゃうぞ☆




「起きやがれ」
「ぐっ・・・・・・」

『ソレ』は突然やってきた。
ソレと称する以外にどうしようもないソレ。
夕食を食べた後に一眠りのつもりがいつのまにかグッスリ眠りこけていたゾロを踏みつけたソレ。

「・・・・・・今度はなんだ」
「ん?婦警さん」

ソレは自らを婦警と名乗った。





なにも言うまい。
否、何も言えない。
婦警さんと名乗るそれは確かに婦警さんの恰好をしていた。
そして婦警さんは短いスカートから脛毛丸出しだ。
ソレはそれだけでゾロを閉口させた。

「ここは駐車禁止区域です。よって逮捕」

婦警さんはゾロの手首にガチャリと小道具を、『手錠』をかけた。

「車なんか停めてねェ」
「・・・・・駐マリモ禁止?」
「クビを傾げるな。しかも駐禁で逮捕はねェだろ」
「えー、午後23時11分容疑者の身柄を確保」
「聞け」

会話というのはお互いの意思を伝え合うものであって、反対に言えば他人の意見を汲み取る気のあるもの同士の間で初めて成り立つものであり、今目の前にいる端からヒトの意見なんぞ聞く気のない『婦警さん』に対し、ゾロの言葉はなんら力を持たなかった。

よってゾロは錨綱格納庫、彼曰『取調室』に連行された。










深夜の格納庫、いや取調室は真っ暗だった。
その中ではサンジの持つ火を入れたランプだけが唯一の光源で、それをゾロの頬に押し付けるようにかざしている。
いや、光源はもぅ一つ、彼の口に加えられたタバコ。

「・・・・・・咥えタバコは問題なんじゃねェっすか婦警さん」

婦警さんはチンピラもかくやという勢いで眉間に皺をよせ、火のついたままのそれをぷっと床に吐き捨てる。

おいヤメロ。船は木造だ。

「昨日の午前0時頃、ドコでなにをしていた」
「オレの容疑は駐車禁止でしかも現行犯じゃなかったか?」
「聞かれたことだけに黙って応えろ!!」

2人の間にテーブルのように置かれた木箱にサンジがだんっ、と足を振り上げる。
薄暗い格納庫で婦警さんの短いスカートの中の三角ゾーンがチラ見えだったりそうじゃなかったり。
ともかく婦警さんは今は『婦警さん』ではなく『取り調べの敏腕刑事さん』モードになったらしい。
ゾロとしては、この妙なプレイを早いトコ終わらせたい。

「その頃ならテメェとキッチンでセック・・・」
「それはさておきっ!!」

だんっ、と今度は手で木箱を叩いて無理矢理ゾロの言葉を中断させる。

「動機はなんだ?」
「あぁ?」

動機?動機とは、駐車禁止区域に駐車(っていうか居眠り)をした動機だろうか。
強いて挙げれば眠かったから、だろうか。

「答えろ!この連続婦女暴行魔がっ!!」
「あぁあっ!?」

何時の間にか、ゾロの容疑は『駐車禁止』てはなく『婦女暴行』になっていたらしい。

「ふざけんなクソコック!おとなしく遊びに付き合ってやりゃぁつけ上がりやがって!だいたいレイプすんのに動機なんかいるか!」
「やっとみとめたな真犯人め!」
「なにが真犯人だ!お前の言動はなにもかもがおかしいっ!!」

付き合ってられんとばかりに身体を倒して寝る体勢を取った。
甲板でもドコでも寝られる彼にとって床の硬さなんかはなんら障害にはならない。

「勝手に寝たらこの警棒をテメェのケツの穴に突っ込む」

先ほどとうって変わって冷静にボソリと呟かれた言葉に背中が冷えた。
チラリとサンジの腰の辺りを見ると小道具その2、『警棒』。
ゾロが眠りに落ちるための障害は、床の固さでも硝煙の匂いでもなく、目の前にいる彼。

ゾロは逃れられない自分の運命と目の前の男の頭の悪さを呪った。





サンジの『取り調べ』という遊びは「田舎のお袋さんが〜」から始まって小道具その3、『カツ丼』まで出てきた。
いつ用意したともしれないカツ丼は若干冷めてはいたがやはりウマかったのでそれだけが救いか。
いつ終わるともしれないこの遊びにゾロはサンジが早く飽きることだけを祈ってサンジの問いに頷きと「はい」と「オレがやりました」だけで答えた。

そして事態は終局をむかえる。

「あくまでもシラをきるつもりか!だったらその体に聞いてやらァ!!」
「オレがやったっつってんだろうが!大体テメェはそれがやりたかっただけかっ!!」

いいかげんメンドクサくなったゾロは力づくでこのバカな遊びを終わらせようとして拳を振り上げ・・・。
振り上げようとして自分の腕が思うように上がらないことに気が付いた。
サンジを見るとしてやったりの笑み。

「さっきの・・・カツ丼か・・・・・・」
「ん〜?なんのことだか」

サッパリ分らねェ、と言って笑うサンジの顔が真実を物語る。
フルコーラスで歌われた「母さんが〜夜なべ〜をして〜」はカツ丼に仕込んだ薬が回りきるまでの時間稼ぎだったらしい。

机代わりに使っていた木箱を脇に寄せて覆い被さるようにゾロの体を床に横たえる。

「テメェの罪状は『いたいけなサンジ様を放置プレイにした罪』だ」
「テメェ・・・・・・」

よくもまぁ何ヶ月も前のことを執念深く覚えているもんだ。
というかゾロがスッカリ忘れた頃を見計らった確信犯っぽい。

「判決は死刑、と言いたいとこだがしょうがねェ、抜かずの三発で勘弁してやる」

そういうことは、普通タチが言うもんだ。
そんなことはないと思いつつも自分の方が犯されそうな勢いにゾロの背中にじっとりと冷たい汗が流れた。






「・・・・・・・・・っ」
「オラ、もぅイキそうかよ、スゲェ濡れてんぜ?」

自分は婦警の服のボタンひとつすら外さないままゾロだけを丸裸にし、広げさせた脚の間に跪くようにしてゾロの性器をしゃぶっていた。

「ブッ殺す!」
「この四本目の刀でか?」

いくら凄んでも素っ裸で性器を怒張させたゾロに爆笑をくれるサンジには効果なんてあるはずもない。

「ガチガチじゃねェか、わはは、血管浮き出てんぜー!」
「う・・・・・・」

サンジといるといつも切なく(いろんな意味で)なるが、今回はまた格別に切ない。
切な過ぎで涙も出そうだ。
もぅすでにつんと鼻の奥が痛い。

「お?泣くか?泣いちゃうか?大剣豪が?乙女のようにーっ!!」

あいかわらずサンジの爆笑はやまない。
視線で人が殺せたらと言わんばかりの勢いで睨みつけてもやっぱりやまない。

「さて、そういえばテメェには可愛いナースなオレを放置された怨みがあるんだったなぁ」

温かくくっついていたサンジの体温が離れて、急に外気の肌寒さを感じる。

「まさかテメ・・・」
「どうしよっかな〜?」

サンジがにやけた視線で見下ろしてくるがゾロにはもぅ余裕のかけらもない。
こんな一糸纏わぬ姿で、しかも性器をビンビンに勃起させたままで放置されるなんてそれこそ冗談じゃない。

「サンジ!」
「ん〜?」

相変わらずゾロに一切触れずにやけているだけのサンジ。
格納庫を出て行かないだけましだがいつ「じゃぁオレは寝るから」といって去ってしまうかも入れない状況にゾロの焦りはつのるばかりだ。

「サンジっ!」
「サンジ・・・様だろココは」
「ああぁ!?ふざけんなテメェ!」
「あー、そういえばまだ明日の仕込みがすんでなかったなー」

言外に、「言わないならこのまま放置して仕込みするぞ」という脅し。
普段なら、襲い掛かって無理矢理にでも突っ込むこの場面で、指一本満足に動かせないゾロの武器は視線と言葉のみ。
そのどっちも相手に通用しないとしたら。

つい、と視線だけでサンジを呼んだ。
あたかも通じたように、いや実際通じたのだろうサンジが胸を重ねるようにゾロの上に覆い被さりゾロの首元に顔を埋める。
一生に一度しか言わねェぞ、という思いで。
できるだけ小さな小さな声で。

「・・・・・・・・・」

言った。










「うー、この一服が堪んねェなー」

情事のすぐ後、素っ裸のままあぐらをかいてタバコを吸うネコはどうだろう。
薬で思うように制御のきかない体は、もぅ出しに出し切った感がある。
体がグッタリとだるいのは薬のせいなのか情事のせいなのか。
情事のせいならなぜこの目の前のバカはこんなにも元気なのか。
一瞬、人の精気を食らって生きる化け物を思い起こさせた。
なんだかなにもかも吸い尽くされたっぽい。

しかも体が動かないことをいいことに、最中になんだかんだと屈辱的な言葉を投げかけられた。
唯一の救いはそれでも彼が自分に突っ込もうとしなかったことと相変わらず気持ちの良かった締まり具合か。

「あ、ちなみにテメェの本当の罪状は『ハート泥棒』だからvオレのvv」
「・・・・・・・・・」

盗んだハートは、そろそろ返してもいいような気もした。

(だいたい……それならテメェも同罪だ)

そんな感じでゾロのハートとか盗んじゃった彼に、どこまで自覚はあるのか。

「返さなくてもいいぞ。オレも返さねェから」
「……………おぅ」

あるらしい。


'03.10.27