たなぼたぼったぼた




あたりは満天の星空。
もぅ時刻は真夜中をまわっていて、夜遅くまでキッチンで仕込みをしているコックさんも、すでに男部屋でぬくぬくとハンモックの中。
そんな中一人、ゾロは甲板の真中に寝転がってふてくされていた。

(クソっ)

こころなしか右頬が少しはれている。

(なにもなんとかシュートとかまでいれなくたっていいじゃねェか)

つい先ほど、コックさんに夜のお誘いをかけにいったゾロは、アッサリ断られてしまったことに腹をたて、無理矢理コトに及ぼうとしたトコロ彼の自慢の脚をおみまいされてしまった。
それでもめげずに頑張ったら、今度は壁にかかっていたフライパンで頬を叩かれた。
そりゃぁもぅフライパンなんか大ぶりで振られた日には叩かれたなんてカワイイもんじゃない。
それでもどうしてもと詰め寄ったら待っていたのはコリエシュート。
ちなみに甲板の真中に寝転がっているのは別にふて寝をしているワケでもなんでもなく、キッチンから蹴り出されて起き上がれないでいるからだ。

(最近やたらしぶってやがんな)

船にニコ・ロビンが乗ってから、コックの性行為に対する行動は前以上に慎重になった。
ビビが一人抜けて人数的には前と変わりないが、どこかとっぽい王女さまと犯罪会社の副社長じゃえらく違う。
サンジが慎重になるのもまぁわからなくもない。
しかし分らなくもないのは頭の話で、ゾロの下半身にはまったくもって納得いかない。

(まぁでも・・・な)

星空の下、しびれた体で一人ほくそえむ。
ゾロには勝算があった。
今日の昼間、ルフィとチョッパーが騒いでいたのを聞いたのだが、明日は七夕だ。
なにやらウソップも正体不明のエイリアンのような飾りを作っていたし。

別にゾロは、特別にイベントが好きなわけではない。
わけではない、が。
サンジはそういったイベントやお祭りごとが大好きだ。
そしてなにやら夢見るロマンチストだ。
つまり、そういうイベントの時には、必ず無条件でセックスができるっ!
と、ゾロは思っている。

クリスマスでも、バレンタインでも、浮き上がりまくっているサンジにちょっと付き合って軽くキスの一つでもすればそのままセックスだ。
そしてそういう時のサンジはなんも素直で可愛らしくてよい。
何回ヤっても次の日がどうだとかぐちぐち言わない。
むしろ自分からねだってくる。
いつもはスグにシャワーを浴びにそそくさと出て行ってしまうのにそういう時だけはいつまでも裸でいちゃいちゃしていたり。
そのままもぅ一回ヤったり。
朝まで隣で寝たり。

明日には、どこかの島にもつくらしい。
そうしたら、久しぶりにベッドのある場所でゆっくりできるかもしれない。

(うん、むしろ今日ヤんねェで明日にとっといてヨカッタかもな)

もしかしたらサンジも、そのつもりだったのかもしれない。

(焦らしプレイか)










「うっひょーっ!島が見えたぞーっ」

朝っぱら、開口一番飛び込んできたのはメリーの頭の上に上ったルフィの声。
瞼の上からでも感じる強い光に目をあけると目の前は真っ青な空だった。

「む?」

体を起こすとなんだかギシギシと痛い。
そういえば、と昨日なんだかめんどくさくなって甲板の上でそのまま寝てしまったことを思い出す。

「よーぅ起きたか寝腐れ剣士」

頭の上から降ってきた眩しい金髪に眉をしかめる。

「あのまま寝たのか、ったく動物な生活しやがって」
「んだとコラ、あの後痛くて起き上がれなかったんだぞ」
「あーら貧弱なこって、その筋肉はきぐるみか?暑苦しいからさっさと脱ぎやがれ」
「テメ・・・」
「んナミさ〜んvロビンちゃ〜んv朝食の準備ができましたよ〜vv」

バカはハートの煙をふりまきながら彼いわく美の女神たちを起こすべく女部屋のあるほうへと行ってしまった。

(アホめ)

まぁいい。
まぁいいのだ。
なにせ今日は七夕だ。
今日の夜には楽しい楽しいセックスライフが待っているのだ。

(ふかふかのベッドで思う存分ヤりまくってやる)

七夕。
七夕にまつわる話なんてゾロには知ったこっちゃなかったが、とりあえずいい日だ。

(七夕でたなぼた・・・なんちってな)

「てっ」

なんだかスコーンという感じに頭に硬いものがあたってきた。
横に転がるそれを拾い上げるとオタマだった。

「メシだ!はやく来やがれっ」

キッチンのドアが開け放たれている。
どうやらそこから飛んできたモノらしい。
ふと回りをみれば、船首にぶら下がっていたハズの船長もとっくにいなくなっていた。










「・・・・・・・・・で?なんだココは」
「どうやら、無人島みたいね」
「っていうかジャングルじゃねェか」

島についたといわれて降りてみれば、なんだか変わった木やら蔦やらがたくさんある無人島だった。
シャギャァ、とかそんな感じの鳥ともなんともつかない声が聞こえてくるあたり、人でないものはいるようだ。

「はぁ」
「なによ、溜め息なんかついちゃって、どうせ七夕にかこつけてサンジくんとベッドでいちゃいちゃしようとか思ってたんでしょ」
「ぐっ」
「見え見えなのよ」
「ウルセーな、羨ましいならテメェもルフィといちゃいちゃぶっ」

とりあえず、鉄拳一発で黙らされた。

「なーぁ、飾り作ったケドよー、そういや笹とかねェよなー」

船の上から声をかけられて、見上げるとたくさんの飾りを両手に溢れんばかりに持ったウソップ。

「あー、木ならあるにはあるケドなー」
「なによ、あたしのミカンの木には指一本触れさせないわよ」

チラリとミカンの木を見上げたが、ナミの一睨みで黙殺。

「探検だーっ!サンジ!弁当!」
「オ、オレも行くぞっ!珍しい植物とかはえてるかもしれないし」
「オラよ、できてんぞ海賊弁当、チョッパーのもな」
「イッタダッキまー・・・」
「食うなっ!」

ボキンとか鈍い音がした。
その会話だけでも、見えない船の上でなにが起こったか容易に想像がつく。
ほどなくして、船長とトナカイの二匹が振ってきた。

「よし!行くぞ冒険!ウソップも行くか?」
「お、お、お、オレは七夕の飾りを作らなければいけないという大事な使命が・・・」
「ふーん、手に持ってんのなんだ?」
「い。い。いやコレは・・・」
「いいけどな、行くぞチョッパー」
「あ。待てよ、七夕の笹がねェんだ、代わりになりそうなモンとってきてくれよ」
「おうっ、わかった。パティ—用の肉だな!」
「え?肉なのか?」
「笹だーっ!!」

あっという間にルフィは見えなくなった。
チョッパーはなんだかトナカイっぽいトナカイになって船長のあとをついていった。

七夕パーティーは夜から。
どうせそれまではサンジも料理に忙しくてかまってくれないだろう。
別段することのなゾロは夜まで眠ることにする。
くぁ、とアクビをしながらいつもの寝床へとむかをうとするところをナミに見咎められた。

「やぁねェ、寝る・食う・ヤるしか能がない男って」
「ウルセー、テメェだって金・金・金しかねェじゃねーか」










「おーい。ゾロ!コレ船の上にあげるの手伝ってくれよー」

結局、サンジとの夜の算段なんかを考えているうちに眠らないまま夕方になっていた。

「あぁ?」

呼ばれて船の上から下をみればなにやら木を肩にかついだルフィとでかくなったチョッパー。

(そういや笹の代わりになるモンとってこいとか言われてたよな)

それにしてもアレは————。

「ヤシの木?」





「うをっ、なんじゃこりゃ」

ルフィのゴムゴムの能力を使って、さして大した労力も使わず船のうえに据えられたヤシの木(もどき)を見て開口一番にサンジが漏らした声がそれ。
料理は終わったのかキッチンからでてくるなりポカンと口を開けたまま木の前に立ち尽くす。

「笹の代わりだっ!」
「代わりって・・・、もっとましな木なかったのか?竹とか、あとはせめて柳とかよ」
「コレしかなかったぞ!」

なぜかエッヘンと胸を張っている船長。

「それにしてもまたえらくデケェ木だな。もっと小せェのにしろよ」
「こ、これが一番小さいヤツだったんだ。コレじゃダメか?七夕できないのか?」
「ん?いや、問題ない、まぁデカい方が派手でイイだろ」

ぼふぼふと、帽子ごとトナカイの頭をなでた。
ついでに腕に抱き上げて、抱えられたチョッパーが嬉しそうに笑ったので一瞬それはオレんのだと言いそうになったが咄嗟にこらえる。
大人気ないし、なによりサンジが怒るから。
せっかくのイベントごとなのにサンジにヘソを曲げられては困るのだ。










「あ、あぁっ・・・」

そんなこんなで、お待ちかねタイムだ。
自分今日一日良くがんばったと思う。
よって美味しくご褒美をいただけるのだ。

「ん、ゾロ・・・・・・」

あの後木に飾りをつけるのも手伝ったし、宴会では早く他のやつらを酔いつぶそうと頑張ったし、更にその後では星も見えない空を見上げながらたらたらとサンジのたれる織姫と彦星の話も黙って聞いた。
頃合いを見計らってキスをしたら思った通り、七夕というシチュエーションに酔ったサンジがウットリと体を預けてきた。

「あ、も・・・、オレ・・・」
「ん?」
「イきそうなんだけど・・・」
「そりゃ早ェだろ」
「ウッセ・・・遅漏が」
「長く、されんの、が、好き、なんだろ」
「あ、あんっ、あ、あっ」

脚を掴んで好きなように揺さぶるとサンジが甘えきったような声で鳴く。
微妙に角度を変えて、ワザとくちゅくちゅと卑猥な音をたてるようにサンジの中をかきまわした。

「テメ・・・それヤメろ」
「ん?どれだ?」

ちゅむ、と唇にキスをするとサンジはそれ以上なにも言わないでゾロの背中に腕をまわしてきた。

(なんつーか・・・)

泣いてるコックはイイ。
いやがるのを無理矢理後ろから犯すのもイイ。
なんていうか男として大満足な感じだ。

それでも。
こんなふうに縋ってこられるものまた堪らない。
ひっかくようにたてられた爪のあたりがジンジンとして、ソコから一気に射精感が降りてきた。

「あー、オレもイキそうかも・・・」
「んだそりゃ」

クスリと、サンジが下で笑ったのがわかった。
すっと目を細めたかと思うと軽く口を開けて舌を突き出してきた。
誘われるままにその舌に吸いついて口の中を蹂躙する。

「は、スゲェイイ、まじでもぅでる」
「ん、あ・・・、オレも、イ、く・・・」

せかすようにサンジの中心を手で扱いて快感を強めてやる。

「んんっ」
「くっ・・・」

サンジがイったときのしめつけが堪らなくてソレを引き抜く間もなくウッカリ中に精液を吐き出した。
びゅくびゅくと断続的に襲う強烈な快感が過ぎるとイッキに脱力してサンジの上に覆い被さる。
はっと気が付いて中出ししてしまったことを怒られるかもしれないとサンジの様子をうかがったがとくに怒っていないのでホっとした。

やっぱり、その日サンジとは朝まで一緒にいた。

「たなぼた・・・イイ日だな」
「あ?なに言ってんだ、そりゃ七夕だろ」


'02.07.07