緊急事態だ。
No Smoking
「タバコを吸わせてクダサイ」
「————却下」
変な勝負をした。
変というか、オレからふっかけた。
つまりはよくある勝負で、勝った方が負けた方を好きにできると。
「一本」
「ダメだ」
勝負自体は勝っても負けてもヨカッタ。
たとえば勝ったら、筋肉マリモに皿洗いをさせるとか。
一日オレの奴隷になれ、とかね。
バカは約束だけは律儀に守るので勝ったらそれこそ好き放題。
負けても、またそれは違った楽しみが。
きっとコイツはバカだから、どうせマニアックなセックスがしたいとか言い出して、ご主人さまと奴隷ゴッコとかすると思ったんだ。
服を脱いでテーブルの上に座って脚を広げろ、とかね。
「オラ、もっと足広げろよ」
「・・・やっ」
「ンだよ、もぅ濡れてきてんじゃねェか」
とか言ってね。
んー、燃える。
ところがマリモの言い出した条件はそんなオレの楽しみを見事に打ち砕くものだった。
「お前、一週間禁煙な」
「・・・は?」
いやだ。これだから筋肉バカはいやなんだ。
せっかく相手を好きにできるのになんでそんな楽しくもなんともないこと言い出すんだ。
四つん這いになってケツあげろ————くらいの気の利いたセリフは言えないもんか。
「一口」
「しつけェ」
夜中のキッチンで、アホは勝手にラックから引き抜いた酒をぐびりとあおる。
たとえばやりたくもない禁煙をしていて、キレるのはそんなとき。
「オレが禁煙してんだからテメェも禁酒しやがれっ!」
「テメェが勝負に負けたんだろうがっ!」
一触即発。
しかし勝負の日からはや3日、ニコチン不足のオレはすぐに筋肉バカに筋肉で対抗するのに飽きた。
「うー」
タバコもマッチも全て初日にとりあげられて、しかたなく自分の指をちゅぱちゅぱと吸ってみる。
普段あればけ大量にニコチンを摂取しているのにちっともニコチンの味がしないのはどういうことか。
「口寂しー」
タバコが欲しいのでおねだり口調丸出し。
甘えきった声で指を咥えたままマリモを上目遣いに見る。
たいていこうすると昔から皆オレの欲しいものをくれたんだ。ジジイはのぞくけど。
ところが、こともあろうことにマリモは、変な感じに欲情していた。
「口寂しいならこれでも咥えてろよ」
イスに座ったまま脚を広げてくいっと顎でソコを指す。
へっへっへ、とかいかにもスケベそうに笑っている。
大エロ剣豪め。
でも今なんかかっこよかったし。
ちょっと勃っちまっちゃじゃねェか。
ちなみに言っとくがオレにはMっけとかそういう変態趣味はねェ。と思う。
「あ・・・」
脚の間にひざまづいて股間に顔を埋める。
「んっ・・・」
わざと苦しそうな顔をして見上げれば、アホはスッカリえらそうな顔をして髪に指を絡めてきた。
普段はカワイイウサギちゃんのくせにオレがこういうことしてやるととたんに態度がデカくなるんだ。
ほんとバカやつめ。
「もっと奥まで加えろよ」
ぐい、と促すように頭に置いた手に力をこめられる。
「んうっ・・・」
苦しい。苦しいけどイイ。
どうにも堪らなくなったオレは片手で器用に自分のボトムの前を寛げた。
あー、やっぱり、スゲェ濡れちまてるし。
「ん、んんっ、は・・・」
「なにテメェ、自分ばっかよくなってんだよ」
自分のを弄る方にばっか意識がいって、口の方がおろそかになったのを咎められた。
「う、あ?」
ぐい、っと髪の毛をつかまれて上を向かせられたかと思うと目の前でゾロが自分のブツをあのゴツい手で扱いていた。
クソ・・・・・・エロいんだよバカ。
「かけてやんよ、顔に」
「あ、やっ・・・」
「まて」と制止をかける間もなく、むしろ精子を顔にかけられた。
「テ、テメェっ!誰が顔射までキめてイイって言ったよっ!」
「あー、飲みたかったのか」
「そうじゃねェっ!」
しかも一回だして満足したウサギは、とっとと衣服をととのえてラウンジを出て行こうとする。
「ち、ちょっと待てっ!!」
「あぁ?」
「あぁ?じゃねェよ、なに自分だけさっさとすませて出て行こうとしてんだよっ!」
「お前が口寂しいっていったんじゃねェか」
マリモはスッキリした顔をして「もう用はねェだろ?」とか言ってる。
用あんだろ!
なんでこんな「ちょっと潤んだ目をして頬を赤く染めた可愛いオレ」を目の前にして、フェラチオだけで満足してんだよ!
「陵辱しろよオレをっ!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「・・・・・・・・・・・・・・ごめんなさい」
パタリと、無情にも渇いた音をたててドアは閉まり、マリモは出て行った。
「なー、聞いてくれよウソップ」
「聞きたかねェけど言うんだろ」
「マリモってばよ、あんな顔して変態なんだぜ」
「オメェにゃ負けるだろ」
「実は放置プレイ好きなんだ。マニアックだろ」
「大丈夫だ。それはプレイじゃねェ」
'03.04.10